04. 要件整理と制作範囲

この章では、ヒアリングした内容を要件として整理し、今回の制作範囲を決める方法を学びます。

要件整理が曖昧なまま制作を始めると、途中で作業が増えたり、想定していない機能が必要になったりします。

制作前に「やること」と「やらないこと」を整理しておくことが、クライアントワークを安定させる土台になります。

要件整理とは

要件整理とは、クライアントの希望や課題をもとに、制作で必要な内容を具体化することです。

ヒアリングでは、相手の言葉で要望が出てきます。

たとえば、次のような言葉です。

  • かっこいいサイトにしたい
  • 問い合わせを増やしたい
  • 自分たちで更新したい
  • スマホで見やすくしたい
  • 採用にも使えるようにしたい

これらは大切な情報ですが、そのままでは制作範囲としては曖昧です。

要件整理では、これらを具体的なページ、機能、作業、確認事項に分けます。

目的と手段を分ける

要件整理では、目的と手段を分けて考えます。

目的は、達成したい状態です。

手段は、そのために作るものや行う作業です。

目的手段の例
問い合わせを増やしたいサービスページを整理する、CTAを置く、フォームを改善する
採用応募を増やしたい採用ページを作る、社員紹介を載せる、募集要項を整える
信頼感を出したい実績、会社概要、代表メッセージを掲載する
更新しやすくしたいWordPress化する、更新項目を絞る、マニュアルを用意する

手段から考え始めると、「本当に必要か」が判断しづらくなります。

まず目的を確認し、その目的に対して必要な手段を選びます。

必須要件と希望要件

要望は、すべて同じ重さではありません。

制作範囲を決める時は、必須要件と希望要件に分けます。

必須要件は、今回の目的を達成するために欠かせないものです。

希望要件は、あるとよいが、予算や納期によって調整できるものです。

たとえば、店舗サイトなら次のように分けられます。

種類内容
必須要件店舗情報、メニュー、アクセス、問い合わせ導線、スマホ対応
希望要件ブログ更新、予約システム連携、アニメーション、多言語対応

この分け方をしておくと、予算や納期が合わない時に、何を優先するか話し合いやすくなります。

対応範囲を決める

対応範囲とは、今回の案件で制作側が対応する範囲です。

Web制作では、次のような作業が関係します。

  • 企画整理
  • サイト構成
  • ワイヤーフレーム
  • デザイン
  • HTML/CSSコーディング
  • JavaScript実装
  • WordPress構築
  • フォーム実装
  • 原稿作成
  • 画像選定
  • 写真撮影
  • ドメイン・サーバー設定
  • 公開作業
  • 操作説明
  • 保守運用

すべてを制作側が行うとは限りません。

クライアントが原稿を用意する場合もあれば、写真だけ別のカメラマンに依頼する場合もあります。

今回どこまで対応するのかを明確にします。

対応しない範囲も決める

対応する範囲だけでなく、対応しない範囲も決めておきます。

対応しない範囲を明記しておくと、後から追加要望が出た時に話し合いやすくなります。

たとえば、次のような項目です。

  • ロゴ制作は含まない
  • 写真撮影は含まない
  • 原稿作成は含まない
  • 翻訳は含まない
  • サーバー契約代行は含まない
  • 公開後の月次更新は含まない
  • 大幅なページ追加は別途見積もり

これは冷たく断るためではありません。

お互いに安心して進めるための境界線です。

ページ数と機能を整理する

ページ数と機能は、見積もりとスケジュールに直結します。

必要なページは、一覧にして整理します。

ページ内容備考
トップサイト全体の入口主要導線を配置
サービス提供内容の説明3サービスを掲載
実績制作実績の紹介初期掲載5件
会社概要会社情報地図あり
お問い合わせフォーム自動返信あり

機能も同じように整理します。

機能対応内容備考
フォーム問い合わせ送信項目は別途確定
お知らせ更新WordPressで更新一覧と詳細
アニメーション軽い表示演出過度な動きは避ける

表にすると、クライアントにも確認してもらいやすくなります。

納品物を整理する

納品物も制作範囲の一部です。

納品物が曖昧だと、公開後に「デザインデータももらえると思っていた」「ソース一式が必要だった」という話になることがあります。

案件に応じて、次のようなものを確認します。

  • 公開済みのWebサイト
  • HTML/CSS/JavaScriptファイル
  • WordPressテーマ
  • デザインデータ
  • 画像素材
  • 操作マニュアル
  • 管理画面情報
  • 公開後チェックリスト

どこまで渡すかは、案件の契約や制作方針によって変わります。

最初に前提をそろえておきます。

確認者を決める

確認者が多い案件では、意見がまとまらず進行が止まることがあります。

制作側から見ると、誰の確認が最終判断なのかが重要です。

最低限、次のことを確認します。

  • 日々の連絡窓口は誰か
  • デザイン確認者は誰か
  • 最終決裁者は誰か
  • 社内確認に何日くらい必要か
  • 複数人の意見は誰がまとめるか

確認者を決めておくと、修正依頼を整理しやすくなります。

要件整理シートの例

要件整理は、簡単な表にしておくだけでも十分役立ちます。

要件整理シート
目的:
問い合わせを増やすため、サービス内容と実績をわかりやすく伝える。

必須要件:
- トップページ
- サービスページ
- 実績ページ
- 会社概要
- お問い合わせフォーム
- スマホ対応

希望要件:
- お知らせ更新
- 軽いアニメーション
- 実績の絞り込み

対応範囲:
- サイト構成
- デザイン
- HTML/CSS/JavaScript実装
- フォーム設置
- 公開作業

対応しない範囲:
- 写真撮影
- 原稿作成
- ロゴ制作
- 公開後の月次更新

確認者:
- 窓口: 田中さん
- 最終確認: 代表

きれいな書類でなくても、内容が整理されていることが大切です。

この章のまとめ

  • 要件整理では、希望を具体的なページ、機能、作業に分ける
  • 目的と手段を分けると、必要なものを判断しやすくなる
  • 必須要件と希望要件を分けると、予算や納期の調整がしやすい
  • 対応する範囲だけでなく、対応しない範囲も決める
  • ページ数、機能、納品物、確認者を整理してから見積もりへ進む