この章では、ヒアリングした内容を要件として整理し、今回の制作範囲を決める方法を学びます。
要件整理が曖昧なまま制作を始めると、途中で作業が増えたり、想定していない機能が必要になったりします。
制作前に「やること」と「やらないこと」を整理しておくことが、クライアントワークを安定させる土台になります。
要件整理とは
要件整理とは、クライアントの希望や課題をもとに、制作で必要な内容を具体化することです。
ヒアリングでは、相手の言葉で要望が出てきます。
たとえば、次のような言葉です。
- かっこいいサイトにしたい
- 問い合わせを増やしたい
- 自分たちで更新したい
- スマホで見やすくしたい
- 採用にも使えるようにしたい
これらは大切な情報ですが、そのままでは制作範囲としては曖昧です。
要件整理では、これらを具体的なページ、機能、作業、確認事項に分けます。
目的と手段を分ける
要件整理では、目的と手段を分けて考えます。
目的は、達成したい状態です。
手段は、そのために作るものや行う作業です。
| 目的 | 手段の例 |
|---|---|
| 問い合わせを増やしたい | サービスページを整理する、CTAを置く、フォームを改善する |
| 採用応募を増やしたい | 採用ページを作る、社員紹介を載せる、募集要項を整える |
| 信頼感を出したい | 実績、会社概要、代表メッセージを掲載する |
| 更新しやすくしたい | WordPress化する、更新項目を絞る、マニュアルを用意する |
手段から考え始めると、「本当に必要か」が判断しづらくなります。
まず目的を確認し、その目的に対して必要な手段を選びます。
必須要件と希望要件
要望は、すべて同じ重さではありません。
制作範囲を決める時は、必須要件と希望要件に分けます。
必須要件は、今回の目的を達成するために欠かせないものです。
希望要件は、あるとよいが、予算や納期によって調整できるものです。
たとえば、店舗サイトなら次のように分けられます。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 必須要件 | 店舗情報、メニュー、アクセス、問い合わせ導線、スマホ対応 |
| 希望要件 | ブログ更新、予約システム連携、アニメーション、多言語対応 |
この分け方をしておくと、予算や納期が合わない時に、何を優先するか話し合いやすくなります。
対応範囲を決める
対応範囲とは、今回の案件で制作側が対応する範囲です。
Web制作では、次のような作業が関係します。
- 企画整理
- サイト構成
- ワイヤーフレーム
- デザイン
- HTML/CSSコーディング
- JavaScript実装
- WordPress構築
- フォーム実装
- 原稿作成
- 画像選定
- 写真撮影
- ドメイン・サーバー設定
- 公開作業
- 操作説明
- 保守運用
すべてを制作側が行うとは限りません。
クライアントが原稿を用意する場合もあれば、写真だけ別のカメラマンに依頼する場合もあります。
今回どこまで対応するのかを明確にします。
対応しない範囲も決める
対応する範囲だけでなく、対応しない範囲も決めておきます。
対応しない範囲を明記しておくと、後から追加要望が出た時に話し合いやすくなります。
たとえば、次のような項目です。
- ロゴ制作は含まない
- 写真撮影は含まない
- 原稿作成は含まない
- 翻訳は含まない
- サーバー契約代行は含まない
- 公開後の月次更新は含まない
- 大幅なページ追加は別途見積もり
これは冷たく断るためではありません。
お互いに安心して進めるための境界線です。
ページ数と機能を整理する
ページ数と機能は、見積もりとスケジュールに直結します。
必要なページは、一覧にして整理します。
| ページ | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| トップ | サイト全体の入口 | 主要導線を配置 |
| サービス | 提供内容の説明 | 3サービスを掲載 |
| 実績 | 制作実績の紹介 | 初期掲載5件 |
| 会社概要 | 会社情報 | 地図あり |
| お問い合わせ | フォーム | 自動返信あり |
機能も同じように整理します。
| 機能 | 対応内容 | 備考 |
|---|---|---|
| フォーム | 問い合わせ送信 | 項目は別途確定 |
| お知らせ更新 | WordPressで更新 | 一覧と詳細 |
| アニメーション | 軽い表示演出 | 過度な動きは避ける |
表にすると、クライアントにも確認してもらいやすくなります。
納品物を整理する
納品物も制作範囲の一部です。
納品物が曖昧だと、公開後に「デザインデータももらえると思っていた」「ソース一式が必要だった」という話になることがあります。
案件に応じて、次のようなものを確認します。
- 公開済みのWebサイト
- HTML/CSS/JavaScriptファイル
- WordPressテーマ
- デザインデータ
- 画像素材
- 操作マニュアル
- 管理画面情報
- 公開後チェックリスト
どこまで渡すかは、案件の契約や制作方針によって変わります。
最初に前提をそろえておきます。
確認者を決める
確認者が多い案件では、意見がまとまらず進行が止まることがあります。
制作側から見ると、誰の確認が最終判断なのかが重要です。
最低限、次のことを確認します。
- 日々の連絡窓口は誰か
- デザイン確認者は誰か
- 最終決裁者は誰か
- 社内確認に何日くらい必要か
- 複数人の意見は誰がまとめるか
確認者を決めておくと、修正依頼を整理しやすくなります。
要件整理シートの例
要件整理は、簡単な表にしておくだけでも十分役立ちます。
目的:
問い合わせを増やすため、サービス内容と実績をわかりやすく伝える。
必須要件:
- トップページ
- サービスページ
- 実績ページ
- 会社概要
- お問い合わせフォーム
- スマホ対応
希望要件:
- お知らせ更新
- 軽いアニメーション
- 実績の絞り込み
対応範囲:
- サイト構成
- デザイン
- HTML/CSS/JavaScript実装
- フォーム設置
- 公開作業
対応しない範囲:
- 写真撮影
- 原稿作成
- ロゴ制作
- 公開後の月次更新
確認者:
- 窓口: 田中さん
- 最終確認: 代表きれいな書類でなくても、内容が整理されていることが大切です。
この章のまとめ
- 要件整理では、希望を具体的なページ、機能、作業に分ける
- 目的と手段を分けると、必要なものを判断しやすくなる
- 必須要件と希望要件を分けると、予算や納期の調整がしやすい
- 対応する範囲だけでなく、対応しない範囲も決める
- ページ数、機能、納品物、確認者を整理してから見積もりへ進む