05. 見積もり・提案・契約前の確認

この章では、見積もり、提案、契約前に確認しておきたい項目を学びます。

ここで扱うのは、営業のクロージングや価格交渉ではありません。

制作進行で揉めないために、金額の前提、作業範囲、支払い条件、修正回数などをどのように整理するかを扱います。

見積もりは金額だけではない

見積もりというと、金額を書くものだと思いやすいです。

しかし、実務では、見積もりは「何に対する金額なのか」を伝えるための資料でもあります。

たとえば、同じ「Webサイト制作一式」でも、含まれる内容は案件によって違います。

  • デザインだけなのか
  • コーディングまで含むのか
  • WordPress化まで含むのか
  • 原稿作成を含むのか
  • 写真選定を含むのか
  • 公開作業を含むのか
  • 納品後の修正を含むのか

金額だけを伝えると、クライアントは自分の想像で範囲を補ってしまいます。

見積もりには、作業内容と前提条件を一緒に書くことが大切です。

見積もりに入れる項目

Web制作の見積もりでは、作業を項目ごとに分けると説明しやすくなります。

案件によって必要な項目は変わりますが、代表的なものは次の通りです。

項目内容
企画・構成ヒアリング内容をもとにページ構成や情報設計を整理する
デザイントップページや下層ページのデザインを作成する
コーディングHTML、CSS、JavaScriptで画面を実装する
WordPress対応更新機能や投稿機能を実装する
フォーム対応問い合わせフォームを設置する
SEO基本設定title、description、見出し構造など基本部分を整える
公開作業サーバーへの反映や公開前後の確認を行う
操作説明管理画面や更新方法を説明する

項目を分けると、どの作業に費用がかかっているのかを説明しやすくなります。

また、予算が合わない場合に、どこを調整するか話し合いやすくなります。

ページ単位と作業単位

見積もりの分け方には、ページ単位と作業単位があります。

ページ単位は、トップページ、下層ページ、フォームページのようにページごとに考える方法です。

作業単位は、デザイン、コーディング、WordPress対応、公開作業のように作業ごとに考える方法です。

どちらが正解というより、案件の説明に合う形を選びます。

分け方向いているケース
ページ単位ページ数が明確で、各ページの作業量を説明したい場合
作業単位デザイン、実装、公開など工程ごとの範囲を説明したい場合

初心者のうちは、作業単位で整理したうえで、ページ数の前提も書いておくとわかりやすいです。

修正回数を決める

修正回数は、見積もり前に確認しておきたい重要な項目です。

修正回数が決まっていないと、デザインや実装の確認が何度も続き、制作期間が伸びやすくなります。

たとえば、次のように決めます。

  • デザイン提出後の修正は2回まで
  • 実装後の軽微な修正は1回まで
  • 大幅な構成変更は別途見積もり
  • デザイン確定後のページ追加は別途見積もり

修正回数を伝える目的は、相手を制限することではありません。

確認のタイミングを区切り、意見をまとめてもらうためです。

素材準備の範囲

原稿、写真、ロゴ、会社情報などを誰が用意するかも確認します。

特に、原稿作成と画像選定は作業量が大きくなりやすい項目です。

次のように分けておきます。

素材担当
ロゴデータクライアント
掲載写真クライアント
原稿クライアントが初稿を用意、制作側が調整
会社情報クライアント
アイコン素材制作側
有料素材購入事前確認のうえ別途

素材の担当を決めていないと、制作開始後に手が止まります。

見積もりの段階で、素材がそろっているか、これから用意するのかを確認しておきます。

支払い条件を確認する

支払い条件も、制作前に確認します。

個人や小規模案件では、着手金を設定することがあります。

たとえば、次のような形です。

  • 着手時に50%、納品時に50%
  • 着手時に30%、公開時に70%
  • 月末締め翌月末払い

どの形にするかは、案件規模や取引先との関係によって変わります。

大切なのは、支払いタイミングを曖昧にしないことです。

支払い条件は、見積書、発注書、契約書、メールなど、後から確認できる形で残します。

契約前に確認すること

契約前には、制作の前提を整理します。

契約書の法的な内容は専門家に確認する領域ですが、Web制作者としては、少なくとも次の項目を確認しておきます。

  • 制作内容
  • 制作範囲
  • 納品物
  • 金額
  • 支払い条件
  • 修正回数
  • 納期の目安
  • 素材提出期限
  • 公開作業の有無
  • 著作権や実績掲載の扱い
  • 保守・運用の有無
  • 追加対応の扱い

これらは、正式な契約書がある場合でも、打ち合わせや提案資料で認識をそろえておくと安心です。

見積もり前提の書き方

見積書や提案書には、前提条件を書いておきます。

見積もり前提の例
本見積もりは、以下の前提で作成しています。

- ページ数はトップページ1ページ、下層ページ4ページです。
- 原稿と写真素材はご支給いただく想定です。
- デザイン修正は2回までを含みます。
- 大幅なページ追加や仕様変更は別途お見積もりとなります。
- 公開作業は現在のサーバー情報をご共有いただける前提です。
- 公開後の月次更新、保守作業は含まれていません。

前提を書くことで、金額だけでは伝わらない範囲を補足できます。

提案で伝えること

提案では、作るものだけでなく、なぜその構成にするのかを伝えます。

たとえば、次のように説明します。

  • 問い合わせを増やすため、サービスページと実績ページを重視する
  • 採用応募を増やすため、働く環境と社員紹介を追加する
  • 更新しやすくするため、お知らせのみWordPress化する
  • 公開後の運用負担を抑えるため、ページ数を絞る

提案は、相手を説得するためだけのものではありません。

目的と制作内容をつなげて、合意を作るためのものです。

この章のまとめ

  • 見積もりは、金額だけでなく制作範囲と前提を伝える資料
  • 作業項目を分けると、何に費用がかかるか説明しやすい
  • 修正回数、素材準備、支払い条件は制作前に確認する
  • 契約や権利関係で不安がある場合は専門家に確認する
  • 提案では、目的と制作内容がどうつながるかを伝える